北米の小説、詩、戯曲、評論、伝記など言語芸術、いわゆるアメリカ文学の作品や作家に関する
情報を扱う雑記帳です。関わりのある映画や音楽、ときには別の地域の作家なども扱います。
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ロバート・バーンズ: ロックの源流
Songs of Robert Burns

あなたが大学生で『二十日鼠と人間』のレポートを書いているなら、題名の由来になったロバート・バーンズ (Robert Burns) の詩について調べることを期待されているかもしれませんね。くれぐれもこの小説の日本語版解説に引用されている箇所の引き写しだけで終わりにせず、図書館やネットでバーンズのことを調べましょう。

彼の詩は18世紀スコットランド方言で書いてあるので、そのまま読んでも難しいかもしれません。はじめに歌を聴いてみる方が親しみはわくでしょう。上記の画像リンクは僕が持っているアンディ・ステュワートさんというスコットランドの民謡歌手によるバーンズ曲集 Songs of Robert Burns のCDですが、現在は廃盤です。ただし、ステュワートさんのホームページで曲の一部を聴くことは出来ます。

特に、あなたが音楽好きの人で、米国のロック、フォーク、カントリー、あるいはケルト系の音楽、スコッチ・ウィスキーなどに興味があるなら、スコットランドの民謡作家としてのバーンズを調べてみると良いです。

スコットランドのバーンズから始まって北米民謡、ウディ・ガスリー、スタインベック、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンにいたる長い旅の入り口を以下に示します。

スコットランドは麦の産地です。「麦畑」とか「故郷の空」という題名で日本でも知られている民謡があります。もとの題名は "Comin' thro[ugh] the Rye"「ライ麦畑を通って」です。

あるいは、麦を原料にして醸造されるスコッチ・ウィスキーの方が、スコットランドの産物として知られていると主張する人も多いでしょう。海外旅行に行くと、行き先がスコットランドでなくても、免税店でスコッチ・ウィスキーを買って来る人は今でもいるかもしれません。

とにかく、スコットランドと言えば民謡とウィスキーです。

「蛍の光」という題名で日本では知られている別れの歌も、もとはスコットランド民謡です。"Auld Lang Syne" という原題はスコットランド方言ですが、標準英語に移せば "Old Long Since" 「ずっと昔の、良き日々」という意味です。

ライ麦畑の歌も、この別れの歌も、作詞はロバート・バーンズということになっています。バーンズは、アングロサクソン・ゲルマン系の方言の一つであるスコットランド低地方言で沢山の詩を書きましたが、民謡も大好きで、聴いて覚えた沢山の民謡を書き取り、本にして出しています。自分でも盛んに歌っていたようです。この種の口伝えによる伝承作品は一つの作品に色々な変種があったり、歌い手の判断で一部が変更・追加されることもあります。大衆音楽と同じです。上記の2曲も、バーンズの創作というより、もっと古くからあった曲のバーンズを書き取り、変更を加えた可能性のある版です。

英文学の名詩集に載っていることの多い "A Red, Red Rose" 「赤い、赤い薔薇」も歌になっています。C、Am、F、Gぐらいのコードを知っていれば弾けます。僕は英詩の授業で、ギターを弾きながらこの歌を学生たちと一緒に歌うこともあります。

スコットランド低地に住む人たちの中には、イングランドによるアイルランド侵略、あるい進出にともなって、同じように海を越えてアイルランド北部へ移住する人も沢山いました。そこでスコットランド民謡はアイルランドのケルト民族音楽とも融合したようです。ウィスキーの製法も伝わり、アイリッシュ・ウィスキーが造られるようになりました。

その後、飢饉や政情不安もあってか、長期にわたってアイルランドから北米へ移住する人も沢山いました。もともとアイルランドの先住民であるケルト系の人たちにも、スコットランドから来たスコッツ・アイリッシュの人たちにも、北米へ移住する人は沢山いました。この人たちと一緒に、民謡とウィスキーも北米へ移り住みました。こうしてカナディアン・ウィスキーも造られるようになりました。

北米へ来たスコッツ・アイリッシュはのどかな山間部での生活を好んだらしく、合衆国南部アパラチア山脈に住み着く人が多かったようです。麦の育たない土地ではトウモロコシからバーボン・ウィスキーを造りました。この人たちのことを "hillbillies" と呼ぶこともあります。日本風に言うと「山太郎」と言った感じでしょうか。この表現は、貧しい人に対する差別的なニュアンスで使われることもあるようです。

勿論、この人たちのあいだで音楽は代々受け継がれました。中には山を下り、街角や酒場で歌い始める人たちも出てきてました。彼らのマウンテン・ミュージックは町の人たちにも愛され、これを真似る音楽家たちも増えました。スコットランドの民謡は北米の民謡になったのです。

農業を始めた人たちもいました。1930年代の大恐慌と砂嵐で土地を失い、仕事を求めてカリフォルニアへ大移動をした人たちの中にも、彼らの子孫は沢山いたようです。『怒りの葡萄』の原作には、この人たちが楽器を持ち寄って演奏する場面さえあります。

スタインベックが演劇小説の題名に使った表現の出てくる "To a Mouse: On Turning Her Up In Her Nest With The Plough" 「鋤で巣をひっくりかえしてしまったネズミさんへ」は読むための詩としてバーンズによって書かれ、歌にはなっていないようですが、詩の中の語り手は貧しい農民で、言葉も素朴な農民の言葉です。題名に使われた語句も "of mice an' men" という風に and のdが省略されています。同じ詩の中には -ing のgを省略した -in' という形も何度か使われています。

時代は変わり、黒人音楽や商業的な要素も吸収して北米民謡はカントリー音楽に発展し、やがてロックが誕生しますが、バーンズの詩で使われていたような省略表現は新曲の歌詞の中でもまだ使われています。

The Story of English

ここまでの話は、BBCで製作した The Story of English (Robert McCrum, Robert Macneil, William Cran) という本の、スコッツ・アイリッシュ英語に関する章の内容をもとに、ウィスキーの話を追加して脚色したものです。

まだガスリーもディランもスプリングスティーンもレイジも登場していませんね。長くなりましたが旅は続きます。
| スタインベックと騎士たち | 00:59 | comments(0) | trackbacks(3) |
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文学
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| 小説の詳説ページ | 2005/12/03 2:33 PM |
ロバートバーンズ
ロバート・バーンズ詩集 ロバートバーンズ研究会 バーンズを演じるようだったので、読んでみたくなって手にしてみた。 でも、資金が思うようにならなくて、先に進んでないみたいだけど・・・。 いつかは公開される事を信じて! どんな詩を書く人なんだろうと、
| あ・べず@バー | 2006/04/21 7:46 PM |
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 日曜日はまたまたスタジオへ行ってきた。いうまでもなく我がサンバエスコーラ・リベ
| 無精庵徒然草 | 2006/11/06 1:35 AM |
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