北米の小説、詩、戯曲、評論、伝記など言語芸術、いわゆるアメリカ文学の作品や作家に関する
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ウディ・ガスリー: この列車は栄光に向かって
ウディ・ガスリー
コメント:『怒りの葡萄』やアメリカのフォークソングに興味のある人に強く薦めたい傑作。渋く美しい映像で、テキサスの小さな町、強大な砂嵐、蒸気機関車の勇姿、危険な無賃乗車、難民キャンプ、心を揺さぶる歌、音楽産業などが描かれる。

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ジョン・スタインベック (John Steinbeck) の長編小説『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath) や、ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演による同名の映画、あるいはボブ・ディランさんやブルース・スプリングスティーンさんのロックやフォークソングに興味がある人に強くお薦めしたい映画を紹介します。スタインベックの友人だった放浪のフォーク歌手が書いた自伝に基づく映画『ウディ・ガスリー: わが心のふるさと』(Bound for Glory: The Story of the Legendary Woody Guthrie) です。


この映画は、大恐慌の過酷さを描きつつ、希望をも感じさせてくれます。ウディがテキサス州で看板かきの仕事をしている1935年頃から始まり、旅に出てロサンジェルスに辿り着き、ラジオで歌うようになり、39年にロサンジェルスを去るまでが描かれます。

最も目立つ特徴は、とにかく映像が美しいことです。やや黄ばんだ様な渋い色調で、ダスト・ボウルに埋もれた町、そこで仲良く暮らす人びと、巨大な黒雲のように迫る砂嵐、煙を吐きながら生き物のように走る蒸気機関車、無賃乗車した人たちのいさかい、情け容赦ない取り締まり、難民キャンプでの生活などをリアリスティックに写しているんですが、全体としてはほのかな詩情の漂う絵巻になっているのです。

前半で、ウディ・ガスリーがギターを持って歌う場面は殆どありません。調弦の狂ったギターをつま弾いたり、町のお祭りでフィドル (ヴァイオリン) をかき鳴らしたり、道ばたでブルースハープ (ハーモニカ) を吹いたり、酒場でピアノを弾きながら歌ったりはしますが、フォーク歌手/作詞家として自覚するようになる前の生活と旅が描かれます。

難民キャンプで歌の力に気づいてからのウディが歌ったりギターを弾いたりする場面はふんだんにあります。ウディ役のデヴィッド・キャラダインさんは吹き替えなしで実演します。ギターもしっかり自分で弾き、話しかたや歌いかたは、録音で残っているウディ本人の話しかたや歌いかたと良く似ています。

この映画で注意が必要なことも書いておきますね。貧しくても卑屈にならず、お金が入るようになってからも貧しい人たちから遠ざかったりしないなど、ウディの立派な面と同時に、無責任な行動をとったり、段々と左翼的になっていく面も隠さずに描かれています。(赤裸々に描いているのは好ましいことかもしれませんが。)

脇役として登場する人物が仮名になっていたり、複数の人物を一人にまとめてあったりもします。1939年にカリフォルニアを去ってニューヨークへ向かうところで終わっているのに、もっとあとで書いたはずの歌、たとえば「追われ人」("Deportee") や「トム・ジョード」("Tom Joad") を歌っている場面もあります。そういう意味では、事実を忠実に映像化した作品ではなく、事実に基づいて脚色した物語として受け止める方が良いでしょう。

このDVDは定価5,040円、アマゾン価格4,000円と高めで、レンタル店にもあまり置いていません。図書館で揃えてもらいたいところです。音声は英語のみでモノラル、字幕は日本語のみです。少しだけ特典映像も付いています。12頁の小冊子がついており、これは資料として充実しています。

付記: ウディがスタインベックと会うのは1940年以降で、この映画にスタイベックは登場しません。勿論ピート・シーガーさんやボブ・ディランさんとの出会いも描かれていません。大統領の就任式でウディの「わが祖国」("This Land Is Your Land") が歌われる時代になったわけですから、40年代以降のウディを描いた続編の映画も期待したいところです。「この列車は栄光に向かって」というのは、自伝の題名に使われ、映画の中でも聴かれる歌の1節 "This train is bound for glory" です。
| 続: スタインベックと騎士たち | 18:38 | comments(0) | trackbacks(0) |
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