北米の小説、詩、戯曲、評論、伝記など言語芸術、いわゆるアメリカ文学の作品や作家に関する
情報を扱う雑記帳です。関わりのある映画や音楽、ときには別の地域の作家なども扱います。
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映画ベンジャミン・バトンは何を伝えたかったのか?
F・スコット・フィッツジェラルドの短編を基にした映画が公開されているというので、地元の映画館で観てきました。大スターが主演していることもあり、お客さんは多かったです。内容は冒険ファンタジーを予想していましたが、全く違いました。ラヴ・ストーリーであることは分っていましたが、これも一般的な恋愛ものとは全く違いました。ネットで感想を調べてみると、絶賛と退屈の両極に分れています。出演者たちと映像の魅力は楽しめたけれど、何が言いたいのか分らないという声もありました。

そこで、謎ときのヒントを少し書いてみたいと思います。


まえもっておことわりしておきますね。僕は映画を観ただけで、フィッツジェラルドの原作は読んでいません。フィッツジェラルドの長編や中編や短編はいくつか読みましたが、この短編 "The Curious Case of Benjamin Button" は読んでいないのです。今回はあくまでブラッド・ピットさん主演の映画について書きます。

映画館で売っていた分厚いパンフレットによれば、主人公ベンジャミンの初恋の人としてケイト・ブランシェットさんが演じているデイジーという女性は原作に登場しないそうです。それでも、この女性は出番が非常に多いです。主人公のベンジャミンより多いかもしれません。この点がこの映画の謎を解く鍵になります。

デイジーという名前で連想するのは、フィッツジェラルドの代表作『グレート・ギャツビー』で主人公ギャツビーが情熱的な恋をする女性デイジーです。ただし、ギャツビーが好きになったデイジーと、ベンジャミンが好きになったデイジーでは、境遇も違います。第1次世界大戦が終結する時期、つまりギャツビーの話に登場するデイジーから見れば娘の世代で、20世紀の女性として育ち、ダンサーとして活躍し、ソヴィエト・ロシアやフランスでも公演します。ベンジャミンが恋したのは、新しいデイジーなのです。

ギャツビーはデイジーと一緒になれずに第1次大戦の戦場へおもむき、音信不通の5年間を経てから、大富豪としてデイジーのもとにあらわれます。デイジーの方は、ギャツビーが戦死したと思っていたかもしれません。あきらめて別の男と結婚したのに、生まれ変わったようにギャツビーが帰って来たため驚きます。

ベンジャミンは、同じ戦争で死んだ若者を悼む時計職人が時間を逆行させたいと願い、その気持ちが作用したためか、80歳の体で生まれ、時間を逆行するように人生を歩むことになった[かの]ように映画では表現されています。ファンタジーとして解釈するなら、時計職人が魔法使いの末裔だったということかもしれません。勿論、そう思わせるように語り手の女性が語ってみせただけという可能性もあります。いずれにせよ、ベンジャミンも戦死した若者の生まれ変わりであるかのように登場します。

長くなってしまいました。謎ときの鍵を、あと二つだけ残しておきましょう。それは過去と偶然です。

過去は繰り返せないと、ギャツビーの友人であるニック・キャラウェイは言います。

もちろん繰り返せるよと、ギャツビーは反論します。

むかしと全く同じ形で過去を繰り返すことはできないでしょう。それでも何らかの形で繰り返せることはあるのでしょうか?

偶然によって、思わぬ方向へ人生が展開することもあります。正確に言えば、さまざまな因果の糸と偶然が絡み合って展開するのです。そういう風にギャツビーの人生を大きく展開させたのは交通事故でした。ベンジャミンの人生でも交通事故による不幸な展開が、意外な方向へ物語を進めていきます。

ベンジャミンとデイジーは素敵な出会いを経験し、一緒にはなれないと観念して一旦は別々の人生を歩み始めます。二人は楽しい過去を繰り返せるでしょうか? 続きは映画の中で、数奇な人生をお楽しみください。

付記: リンク先の商品は発売予定のDVDですが、これがどういう商品になるかは断言できません。この記事は、映画館で観た『ベンジャミン・バトン: 数奇な人生』と、映画館で買ったパンフレットをもとにして書きました。
| ベンジャミン・バトンの冒険 | 09:42 | comments(4) | trackbacks(0) |
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| - | 09:42 | - | - |
私も映画が好きで、今現在、納得できない不当解雇で失業中なので、時間があるとほとんど映画三昧です。映画で励まされ、映画で憂さを晴らしています。

・・・デイジーという名前で連想するのは、フィッツジェラルドの代表作『グレート・ギャツビー』で主人公ギャツビーが情熱的な恋をする女性デイジーです・・・確かに、フィッツジェラルドの代表作『グレート・ギャツビー』との関連がありますね。

気になっていたのですが、解釈できなかった船長の体に刻まれ刺青、戦死したときに羽ばたいた「ハチドリ」とは何んのシンボルなのか?よかったら教えてください!

私は「ベンジャミン」を見た後で、原作のフィッツジェラルドの翻訳を読みました。まるで原作と違うのに驚きました。ならば、この映画のストーリーは誰が?

「フォレスト・ガンプ」の脚本を書いたエリック・ロスが「ベンジャミン」の脚本を書いてました。日本では、脚本家が余り注目されませんが、映画によっては、単に原作を脚色するだけでなく、原作を凌駕する内容もあります。

ブラッド・ピットとデヴィッド・フィンチャー監督といえば、映画『セブン』が衝撃的でしたが、あの作品も凄いと思います。この作品の原作は誰でしょうかね?
先日もテレビで放映して居たので、もう一度みました。

やはり映画は、原作まで読まないと理解できない事が多すぎます。特に今回、他のフィッジェラルドの原作の影響を色濃く受けていると感じました。私は、ついでに映画「華麗なるギャッビー」と「雨の朝、パリに死す」も見ました。

私も「ベンジャミン・バトン」の映画を観て、感動しました。少しこの作品について考えてみました。よかったら私の「ブログ」にもコメントを下さい。
| 流石埜魚水 | 2009/03/07 1:34 PM |
いらっしゃいませ流石埜魚水さん。

「ハチドリ」(ハミングバード) は後ろ向きに飛ぶことができるそうです。ベンジャミンが自分の過去を取り戻してみようとか、やりなおしてみようと考えるきっかけになったのかもしれません。

SE7ENはまだ観ていないんですが、ネットで調べてみたところ、自分の欲望に対して正直に生きている人のことを禁欲的な人が憎悪し、殺してしまう話のようで、ウィリアム・サマセット・モームの短編小説を思い出しました。20数年前に読んだ本なので正確に覚えているかどうか自信は無いんですが、「マッキントッシュ」という題名だったと思います。

フィッツジェラルドは夜の場面を描写した文章がうまいです。『ベンジャミン・バトン』でも夜の美しさを意識しているように感じました。

流石埜魚水さんは、いくつかブログをお持ちのようですが、この作品について考察されているのはどのブログでしょうか。お時間があるときに教えていただけると幸いです。

| Ryotasan | 2009/03/09 10:37 AM |
「ハチドリ」(ハミングバード) は後ろ向きに飛ぶことができるそうです。ベンジャミンが自分の過去を取り戻してみようとか、やりなおしてみようと考えるきっかけになったのかもしれません。・・・貴重なご意見有り難うございます。この脚本家のストーリ展開は、全く天才的だなと感嘆していました。このハチドリもまた大きな暗喩があったのですね!

雑多な事を雑多なブログにあちこちかいてます。ただ必ず「流石埜魚水」というハンドルネームを使ってます。このキーワードで検索して貰えれば、アメーバブログの<流石埜魚水の阿呆船>にたどりつけます。

私てもアメリカ文学をこよなく愛します。映画も大好きです。時々表現方法として短歌も作ってます。なにより、暇なときには書くことが好きです。

是非とも読者になってください。私も貴方のブログのファンです。

「ナチュラル」を書いてから少しお休みしてます。失業中で時間があるからと言って、やや連続連載は草臥れ、余裕がなくなりました。

英米文学を初め、昔の翻訳小説を探しているのですが、捨ててしまった本が多くて…、図書館にすらありません。マラマッドなども大好きで、次から次に読んでました。
今度、DVDと翻訳を見つけて、スチーブン・キングの「グリーンマイル」、トマス・ハリス の「ハンニバル」、「パフューム」、デンゼル・ワシントンの「ザ・ハリケーン」はブログで書いて見たいです。
| 流石埜魚水 | 2009/03/28 4:24 PM |
見つけました。<流石埜魚水の阿呆船>日本らしさが出ていて良いデザインですね。ベンジャミン・バトンの評論も勉強になりました。これからもときどき拝見したいと思います。

http://ameblo.jp/sasuganogyosui/entry-10223464127.html

バーナード・マラマッドは好きです。学生のころ『アシスタント』に感動したり、『修理屋』にはまったことがあります。
| Ryotasan | 2009/03/29 2:40 PM |









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